父親たちの星条旗

昨日の朝一番で見てきました。クリント・イーストウッド監督、スピルバーグ製作の”硫黄島”二部作の一つ「父親たちの星条旗」!

戦争映画はほんと苦手で、「プライベートライアン」も「プラトーン」もどんなに素晴らしい映画だよと言われても見なかったのに。 この映画でもやっぱり熾烈で残酷なほどの戦闘シーンがあるわけで、砲弾に吹っ飛ばされた人体がグチャグチャ…。 戦争ってこういうことなんだよな、そう思いつつ目を背けてました。お医者さんとか特殊な職業の人でもない限り、あんなもんを直視できるようになってもいけないと思うけれど、きつかったです。

とはいえ、アメリカ側の視点から見たこの硫黄島の戦いには、日本兵はほとんど出てきません。たまに不意を突いて攻撃してくるシーンがある程度で、それは日本側の作戦が、硫黄島の地形を考慮したものだからですが、隠れた壕の中から突然攻撃されるために、神出鬼没の日本兵にアメリカ海兵隊は戦々恐々するわけです。

普通、敵の上陸を水際で防ごうとするものなのに、易々と敵を上陸させてしまうというのが意表をついた作戦だったと言えます。硫黄島の地形は、擂鉢山(すりばちやま)と呼ばれる標高170m弱の小高い山ひとつあるだけで、あとは島全体がなだらかで、身を隠す岩場もなく、火山灰からなる真っ黒な砂浜は、上陸してくる海兵隊の足元をとらえて苦労したということです。

この地形ゆえに、日本兵たちは深い壕を掘り、そこで敵を迎え撃つことにしたわけで、水際での攻防は狙い撃ちされるものが、壕の中から相手が来るのを待って攻撃するという逆転の発想によって敵を翻弄しました。このため、当初、アメリカ側は5日で落とすと言われていたものが1ヶ月もかかって、しかも思いのほか多くの死者・負傷者を出すこととなったのです。

この映画は戦争自体がメインのお話ではなく、こういう背景を踏まえた上で、硫黄島に星条旗を立てた6人の兵士の写真が、アメリカ本国に伝えられ、英雄視されることになったことが重要なんです。6人の兵士のうち生還した3人が、戦費を募るための人寄せパンダになってしまったわけです。その写真は、事情を知らないアメリカ本土の人達にとって、センセーショナルで輝かしい印象を残すのですが、実は、隠された真実があります。本国に帰って、各地で華々しく迎えられる彼らの胸に去来するものは・・・。

ほんとうに戦争を体験した者は何も語れない。一体、それはなぜなのか。映画をご覧になったらわかるでしょうけど、戦争においての英雄とは、勝者と敗者はそもそもあるのか、そんなことを訴えかけてきます。

その訴えの続編が、12月9日に公開となる二部作のもう一つの作品、日本側から描いた”硫黄島”の、「硫黄島からの手紙」です。こちらは全編日本語で、役者も日本の第1級の俳優で、日本の硫黄島総指揮官・栗林を演じるのは、ハリウッドでも有名になった渡辺謙さんで、嵐の二宮和也くん、伊原剛志さんらがご出演です。こちらも見ないと、お腹がいっぱいになった気分にならないので、是非観に行こうと思っています。

あぅ~、またあのグチャグチャに傷ついた兵士たちを見るのかと思うとそれはちょっと腰が引けるんですけど~。

この映画だけに限って感想を言うなら、最初、クリントが撮ったにしては淡々と物語っているなという感覚でした。生還した”英雄”3人の心理的なもの、特に、衛生兵ドクは硫黄島での戦闘のとき負傷者が多数出たために、あちこちから「衛生兵!(Corpsman)」と呼ばれるのを、本国に帰ってから何度もフラッシュバックを起こしているのや、ネイティヴアメリカンのアイラがやはり帰還してからの不安定さはあるものの、キャラクターがくっきりと浮き彫りにされることがなかったので。後で思ったことは、彼らを帰還した兵士としても映画キャストとしても”英雄視”することなく、描きたかったのだろうと思いました。ヒロイックな映画とは違う、だからこそ、もう一つの「硫黄島からの手紙」も見なくては完成された作品を見たことにならないような気がしています。

そして、エンドロールまで飽きさせることはありません。この映画の最後には、「硫黄島からの手紙」の予告も入っているというこれまた予告があるんですが、それを待っていると、エンドロールは普通、キャストやスタッフの名前だけがズラズラ~と出てくるのに、古い写真もずっと映し出されているんです。良い意味で、映画での余韻をずっと残し続けてくれているんですね。

映画館へ行ったら、団体客で席が限られていたんですが、団体客とは高校の生徒さんたちでした。先生の引率でドカドカと入ってこられた若者たち、上映まではギャイギャイ騒いでましたけど、上映中はずっとお静かでした。何か感じるとこはあったでしょうか。きっと学校で感想文を書かされることになるでしょうけどね。

原作「父親たちの星条旗」は、6人の兵士の一人を父親にもった息子さんのペンによるものです。

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